― 担子菌研究がアレルギー性呼吸器疾患診療の常識を変える ―
私たちは、環境に広く存在する<担子菌(たんしきん)>という真菌(カビ)がアレルギー性気道疾患の原因や悪化の原因の一つであることを明らかにしました。研究の母体となったのは2007年4月に結成された環境真菌関連気道アレルギー疾患研究会Fungus-associated cough research society (FACS-JAPAN)です。
なかなかなおらない長引く咳(せき)の患者様、喘息の気がある といわれていた患者様の喀痰(たん)から、見慣れない真菌(担子菌)を見つけ出したのです。もしかすると、そのカビが咳の原因かもしれないと考え、気道から除菌したところ “咳がとまった”、“喘息ではなかった”という歓びの声が次々と届けられました。
この感動を伝えたい!という一心で研究を重ね、2009年に新規疾患概念 <真菌関連慢性咳嗽(Fungus-associated chronic cough: FACC)>を世界に向けて発信することができたのです。
― キノコの胞子や菌糸が、呼吸器疾患を悪化させていた! ―
担子菌は、おもにキノコを形成する真菌の仲間なのですが、30000種類以上あるといわれる担子菌のなかでも特に、<ヤケイロタケ>は”長引く咳”と、<スエヒロタケ>は”鼻疾患”や”気管支喘息”、などのアレルギー性呼吸器疾患を悪化させる危険な環境真菌であることが分かりました。
<ヤケイロタケ>や<スエヒロタケ>などの菌糸や胞子が のどや気道にこびりついたままでは、
”咳止め”も 高価な” 喘息の治療薬”も うまく効かないのではないでしょうか? 治らないからとあきらめかけていた咳や痰。そのほんの一部かもしれませんが、紛れ込んだ担子菌のしわざだったのかもしれません。
どちらの担子菌も居住環境に広く存在する環境真菌(かび)であり、治療薬で症状が一時的に改善したとしても、居住環境に存在しつづけるかぎり再発を繰り返し疾患は進行します。