― 咳と関連の深い担子菌発見の背景 ―
アレルギー性疾患で症状の改善が得られない場合、やむを得ずステロイドという強い薬が用いられることがありますが、それが最終兵器であってよいはずがありません。ステロイド薬を使わずにすむ方法がないだろうかと考えるとき、疾患の原因、悪化原因となる病原菌を追究することが大切になってきます。
私たちは、なかなか咳がとまらない難治性咳嗽患者の気道検体(たん)に注目し、検出された担子菌が疾患の原因アレルゲンである可能性を見出しました。
気道検体から原因真菌を検索しようという試みは、決して新しいことではないのですが、Aspergillus(アスペルギルス)などの悪役達とくらべると、遠慮がちに弱々しく遅れて生えてくる<白色カビ>など、誰が重要な病原菌と考えたでしょう。顕微鏡で観察すればただの細い菌糸(ほそい糸状の菌)。早々とMycelia (マイセリア;菌糸体)の名のもとに、年余にわたって舞台の袖に追いやられてきたのも無理はありません。
FACS-JAPAN本部の金沢は、アトピー咳嗽研究発祥の地です。難治性のアトピー咳嗽患者の気道検体から検出されてくる「無胞子性白色カビ」に目が留まらないはずがありませんでした。
これはなんというカビ? 抗真菌薬で除菌できる? 除菌すれば咳が止まる?
感染症を扱う学者からすれば取るに足らない雑菌が、アレルギー性気道疾患のfieldにおいては、<Basidiomycetes バシディオマイセーテス; 担子菌>に名を変えて発掘されることになったのです。
― FACS-JAPANからの発信 ―
― FACS-JAPANからの発信 ―
2009 真菌関連慢性咳嗽 (Fungus-associated chronic cough; FACC)
2009 ヤケイロタケによるアレルギー性真菌性咳嗽 (Allergic fungal cough)
2011 スエヒロタケ喘息 (Schizophyllum asthma)
2015 スエヒロタケによるアレルギー性副鼻腔気管支真菌症
(Sinobronchial allergic mycosis;SAM)
1. Ogawa H. et al. Efficacy of itraconazole in the treatment of patients with chronic cough whose sputa yield basidiomycetous fungi—Fungus-associated chronic cough (FACC). J Asthma 2009;46: 407
2. Ogawa H. et al. Allergic Fungal Cough (AFC). A more severe type of fungal associated chronic cough (FACC), Pulm Pharmacol Ther 2011;24:e3-e4
3. Ogawa H. et al. Two cases of Schizophyllum asthma: Is this condition a new clinical entity or a precursor of ABPM? Pulm Pharmacol Ther 2011;24(5):559-562
4. Ogawa H, et al. A proposal of guidance for identification of Schizophyllum commune-associated sinobronchial allergic mycosis. Allergol Int. 2014 Jun;63(2):287
― 今なぜ、担子菌なのか? ―